コラム
■販促の職人、はんこ屋ケンちゃんの儲かるネタ帖

第1回目 「異業種だから解る、あぶない会社」

今回から「儲かるネタ帖」というテーマで、お話させていただきます。
「広告の現場監督」カシワギです。

さて第一回は、先日私どもの近所にオープンした「カレー屋さん」でのお話です。

そのお店は数週間前に、ま新しい看板が掲げられているのを目撃して発見しました。
数日前には、店舗のシャッターに「近日オープン」という、紙が貼り付けられ、そこに「カレー398円」と、手書きの文字で書かれてありました。

私の事務所から徒歩2〜3分という距離なので、こういうお店が出来るのはありがたい、という期待を胸に、オープンから3日目のお昼過ぎに、さっそく行って見ました。

オープンから間がないということで、お店は混雑しているかと思いきや、「自動ドア」を開けてなかに入ったところ、お客さんは一人もいません。

「いらっしゃいませ〜」と、言う声もなく、オープンキッチン風の厨房の中で、ご夫婦と見られる男女がおもむろに立ち上がるのだけが見えました。

さらに「おや?」と、思ったのはテーブルにも、壁にも「メニュー」がなく、やっぱり手書きの文字で「セルフサービスでお願いします。」とだけ書いてあるのです。

注文の仕方もわからないまま、落ち着かない感じをかもし出していると、女性の方の店員さんが、確認したわけでもないのに、勝手にお皿にご飯を盛り付け出しました。
どうやら、私の分のようです。

そうした一連の流れからこのお店は、「カレーライス398円のみの単品販売のお店」とわかりましたが、それにしてもあまりにもそっけない。と、言うかこのお店のお客さんを大切にする「心構え」とか「おもてなし」の姿勢ようなものが、全くうかがないのが残念でした。
お店に入ったことを後悔させるひと時でした。

まぁ、398円(なぜ398円なのだろうか???)だから、仕方ないか。
そんな思いで席に付きました。

カレーは、別段「旨い」とも「不味い」とも思えない平凡な出来です。
つまり、単品で勝負出来るような「商品」とは、とても思えないのですがこれは私の主観です。
「カツカレー」とか「エビフライカレー」とか、トッピングの「玉子」とか「らっきょう」など、一切ない。
ちょっと期待はずれのお店でした。

2度と来ることはないだろうなと思いながら、出されたカレーを食べていて、次に来店されたお客さんへの対応には、「何故なんだ」と、思わず突っ込みを入れたくなるほど意外な接客でした。


やって来た若い男性のお客さんは店員さんに向かい「カレーの大盛りって出来ますか?」と、お尋ねになったのです。

大盛りとは、いつもよりご飯を多い目に盛るだけのこと。
私は当然、2つ返事で「かしこまりました。」と、言うと思っていたのですが、すぐに返事がないばかりか、何やら中で揉めている様子です。

そして、女性の方の店員さんが出て来て、申し訳なさそうに、
「すいません。大盛りの価格設定やら、お皿を、まだ用意していないので出来ません。」
と、あっさり断っているのです。

お店の雰囲気からして、どう考えても夫婦2人でやっている個人事業のお店です。
フランチャイズ本部に、メニューや食材の「量」や「価格」を徹底管理されている様子は全くありません。

つまり、価格もメニューも、その場のご夫婦の裁量で、即断できるお店のはずです。
ご飯を少し、多く盛り付けるだけの判断がなぜできないのでしょうか?
お客からの大盛りの要請は、ほんの少しであるとしても、売上を上げるチャンスです。商売人である以上お客の要請に応え、売上を上げるのは「宿命」のはず。

もしくわ、オープン当初はサービスで、大盛りも同金額と言えば、この男性客は「また来よう。」と、思ったかも知れません。それならば、労せず固定客を獲得できるこれまた大きなチャンスです。

このケースで大盛りをむげに断る理由は、私の辞書には絶対にありません。

ここまでひどいと、このお店が今後どうなって行くのか、とても興味がありますので、私はまた様子を見に行って見ようとは思います。
でも、普通のお客さんには「こんな店2度と来たくない」と言われても仕方ない、商品にも接客にも魅力を感じないお店のつくりだったのです。


さて、ここからは私の推測であるということを申し上げたうえで書かせていただきます。

このお店は、「安くて美味しいカレーを作る」ということは、目指しているようです。
いまどき、398円でお昼が済ませられれば、かなり「お得感」があるかも知れません。


「安くて、美味いカレーさえ作れば、お客は勝手にやって来る。」


そう思って商売を始めたとしか考えられません。しかし、その考えは果たして正解でしょうか?

私はこのように考えています。
残念ですが、どんなに美味くて、安いカレーを作ったとしても、それだけでお客さんには来てもらえません。
この場所に「安くて美味いカレーがあるぞ」と、広告などで知らせなければならないのです。

また、来たお客さんが「口コミ」で、どんどんお客さんを呼んで来るなどと言うのは幻想です。
「口コミ」なんて、そんなに簡単に発生したりしません。「口コミ」は、自分で起こすものなのです。
「口コミ」を発生させやすい「仕掛け」というものもあるのですが、このお店には一切、見当たりませんでした。

つまりこのお店、カレーの作り方は知っているが、お客の集め方は知らない。
また、来ていただいたお客様を、もう一度来ていただくようにする。その工夫も全く知らない。

知らないままお店を始めた。と、言うことなのではないでしょうか。

オープン当初は最もお客が集まる期間です。「お客の集め方」を知っていれば、オープン3日目のお昼のかき入れ時にお客さんがたった2人という、この状態は信じられないです。

お客さんにもう一度来ていただくのはどれほど大変なことなのかを理解していれば、お客の希望をこんなに簡単に拒否するなど有り得ないことですし、売り込むチャンスを自ら放棄してしまうなど、商売人としては失格です。

他のメニューや、トッピングなどは「アップセル(追加販売)」のチャンスなので、いろんな考えもあるでしょうが、やらない手はないのです。
例えば「玉子」を、カウンターに並べておくだけで、売れてしまうのですから、こんな簡単なことはありません。


で、この話。
あなたにとっては、よくある他人事と、思われるかも知れません。
私が気が付くくらいなので、あなたもこのお店に行ってみれば、同じような感想を持たれたことでしょう。
うちはこんな失敗はしない。うちの会社(お店)は、きちんとしているよ。
と、言うのならいいのですが、もしかしたらこのカレー屋さんのご夫婦も、他の業界の「不振に悩んでいる会社」の話を聞いたときに、同じように「うちのお店は大丈夫。きちんと、安いカレーを提供しているもの。」と、言ってそうで心配しています。

ことほど左様に、「他店」「他業界」のことは、よく見えるのですが、自分の会社(お店)のこととなると、全く見えないと言う人は多いのです。

かく言う私も、「じゃあ、あんたはきちんとやっているのか?」と、言われれば実は自信がありません。
なので、このように、他業種の方たちから、出来るだけ学ぶということを心がけているのです。
他業種で起こっていることは、決して他人事ではありません。

あなたも、このように自分では気が付かないが、他人が見れば明らかにおかしなことをやっている可能性はありませんか?
また、他業種の成功事例を積極的に取り入れておられるでしょうか?
『出来る人』は例外なく、他業種から学んでいます。

よく考えてみると、同業者のノウハウを真似すると「泥棒」呼ばわりされるのですが、他業種からのノウハウを取り入れると「工夫上手」と、ほめていただけるのです。だから、やらない手はありません。

私は、商売がら色んな業界や業種の「販促物」や「広告」をたくさんお手伝いさせていただきました。
もちろん失敗もたくさん経験いたしましたし、ほんの少しかも知れませんが、成功例もいくつか体験させていただいています。
クライアントさんだけでなく、自店舗の販促活動でも、同じように失敗と成功を経験して来ました。


次回からは、そうした事例をご紹介して行くのですが、とくに「小予算」で出来る「販促活動」に的を絞ってご紹介させていただきたいと思っています。

それは、今のような時節柄、無尽蔵に広告予算がある会社などほとんどないからです。
ましてや私のクライアントさんである、個人事業主さんや中小企業の方たちは、なおさらです。
こうした方たちには、限られた予算内で、効果的にお客を集める情報にしか興味を持ってはいただけないと考えています。

例えば「10円」から出来る、販促活動なんてのはいかがですか。
もちろん、10円で即座に結果が出るなどと言う販促はありませんが、少しの予算でテストを実施し、テスト結果によって費用を投入するか否かを判断するというやり方です。

また、いつも使っている「あるもの」を「このように」工夫するだけで、こんなに良いことが起こるんだ。しかも、こんなに安い費用で。と、いう情報も提供いたします。

私の「儲かるネタ帖」には、そのような情報が詰まっているのです。


次回からのご報告をぜひ楽しみに、お待ち下さい。

平成21年4月

販促物現場監督 柏木健児
はんこ屋ケンちゃん
【著者プロフィール】
【著者プロフィール】
本名:柏木健児
職業:はんこスーパー船場
在住:和歌山県
昭和36年三重県伊勢市生まれ。
大阪市、奈良県生駒市、桜井市などで幼少期を過ごし、大手消費者金融に15年勤務、36歳で退職し、はんこスーパーFCに参加して独立を果たす。
が、予測を大幅に下回る売上に開業当初から経営危機に瀕する。そのため独学でFC本部に頼らない販売戦略を考案し、店舗業態を物販から販促物提案型店舗に大幅変更し、急成長を遂げる。
広告の現場監督を自認していて、名刺仕掛人の異名もとっている。
ホームページは http://meisi.ikora.tv
お問い合わせは wakayamains@ybb.ne.jp
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